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再生医学

再生医学
 再生医学は、幹細胞の応用により飛躍的に進歩し世界各国において様々な分野で実用化に向けて研究が進められている。脊髄損傷に対する神経再生の試みも、国内外で進められている。損傷神経を再生させる目的で、胎児由来神経幹細胞、ES細胞由来神経幹細胞、iPS細胞由来神経幹細胞、骨髄間質細胞、成体嗅粘膜などの細胞移植が行われている。動物実験や、一部では臨床試験も開始されており、神経細胞および軸索が再生することは確認されてきている。しかし、現時点において神経再生による運動機能回復の効果については、明確なものとはなっていない。我々は、神経損傷部位に細胞移植後、神経軸索が再生し神経細胞とシナプス形成する場合、本来の神経回路と異なる神経再生が起こっている可能性が高いと考えている。このため、神経再生のみでは運動機能の回復は起こらず、運動機能を回復させるためにはリハビリテーションの介入が必要不可欠なものであると考えている。
 現在、我々は大阪大学脳神経外科との共同研究で、神経再生治療後の脊髄損傷者におけるリハビリテーション介入による運動機能回復効果について研究をすすめている。

共同研究

 大阪大学脳神経外科では、慢性期完全脊髄損傷患者に対し、嗅粘膜移植による脊髄神経再生治療を2008年より開始している。我々は、嗅粘膜移植術後の慢性期完全脊髄損傷患者のリハビリテーションを担当し、運動機能回復に対する効果について検証を行っている。

期待されるリハビリテーションの効果

   1)再生した神経回路への身体適応
   2)運動機能回復に有効な神経回路の再生構築
   3)回復した筋活動の増強と実用性の獲得
   4)神経栄養因子の誘発と神経伸長抑制因子の抑制

主なリハビリテーション内容

   1)筋電図バイオフィードバックを利用した訓練
     ・目的筋の表面筋電図をモニターしながら目的筋の筋放電を誘発
     ・目的筋の動きのイメージのみではなく、様々な肢位と様々な動きのイメージ
      で筋放電を誘発
   2)高負荷・高頻度歩行訓練
     ・長下肢装具を使用した歩行 (平行棒、歩行器、ロフストランド杖 )
     ・つり下げ式免荷装置による歩行
     ・水中での膝歩行
     ・筑波大学との共同でロボットスーツHALを使用した歩行

 これまでに認められた成果

   1)麻痺筋(腸腰筋、大腿四頭筋、ハムストリング、前脛骨筋、腓腹筋)よりの
     随意筋放電の誘発
   2)完全麻痺であった腸腰筋および大腿四頭筋の随意運動の出現(ビデオ画像参照)

今後の課題

   1)随意筋放電の精度と放電量の向上
   2)随意運動を認めた筋の筋力増強
   3)実用歩行の獲得